目次
3. プロジェクトの課題の対策
それでは、これらの原因を解決するたまには何をすれば良いのでしょうか。
文章で示すことは簡単です。次の 2つです。
- プロジェクトを可視化する。
- メンバー間で情報を正しく連携する。
これだけです。さぁ、実践してみましょう。
とはいっても、これだけでは何を解決すれば良いのか分かりませんね。では、もっと具体的に解決すべきポイントを考えていきましょう。
- プロジェクトの全メンバーが、プロジェクトの進捗状況、問題・課題、作成した資料など、プロジェクトに関わる全ての情報へアクセスできること。
- プロジェクトメンバー間で、いついかなる時でも、誰とでも、情報の齟齬なく、報告・連絡・相談と行った意思疎通ができること。
ということになります。これらを実現できれば、プロジェクトの大半の問題は解決すると言っても過言ではありません。
では、もっと具体的に解決すべきポイントを考えていきましょう。
3-1. プロジェクトを可視化する
まず、プロジェクトを可視化しましょう。
プロジェクトで可視化すべきものはなんでしょうか。
各工程で作成される成果物でしょうか。要件定義書、設計書、テスト計画書、など、これらは納品物としてたしかに必要です。ただ、製作途中のものも完成したものも、その内容は可視化されており、可視化が大事ではなく、品質を問うべきものであって、プロジェクトの運営自体には直接影響してきません。プロジェクトに不要というわけではなく、あくまでもプロジェクトを運営するにあたっては、その進捗と品質の状況が分かれば良いものです。
では、プロジェクトの運営上必要なもので可視化されていないもの、とはなんでしょうか。
進捗管理表です。
「え、進捗管理ならガントチャートやWBS(Work Breakdown Structure) などを、Excelで進捗状況を確認しているよ」とおっしゃるかもしれません。では、それらを使って管理されているあなたへいくつか質問をします。
- そのツールには全ての作業項目が記述されていますか
- そのツールで明記されている各作業項目は、他のどの作業項目に影響があるか分かるようになっていますか
- 各作業項目を実施する人は明確になっていますか
- その作業項目の完了基準は明確になっていますか
- 作業項目の「状況」を示す欄に「進捗状況90%」となったまま、数週間経過している項目はありませんか
- 今日、各メンバーは自分がなにをすべきか、正しく理解され、徹底されていますか
- そのツールを更新・管理している人は誰ですか
他にもまだ聞きたいことはありますが、これらの質問に正しく、自信を持って回答できる人は少ないのではないでしょうか。「ツールで管理している」という事実だけがあるだけで、それらのツールによって、プロジェクト自体を正しく管理されているわけではないのです。そのため、ツールは使っていてもプロジェクトの状態を一目で分かるような状況にはなっておらず、プロジェクトの健全性を把握することができない状況となっているのです。
「デスマーチ・プロジェクト第二版」p.111 コミュニケーションの重要性、において、プロジェクト運営において、プロジェクトの状態がどのようにあるべきか、次の3点で示されています。
- プロジェクト・マネジャーに秘密の無い状態。
- プロジェクト・チーム全員がプロジェクトの全てを知っている状態。
- メンバー全員がプロジェクトの現状、優先度、リスク、制限条件、政治的要素を全て承知している場合。
プロジェクト運営の可視化、とは、プロジェクトの状況を「全てのメンバーが」把握することのできるツールを持つこと、が大事とも理解することができないでしょうか。
では、それはこれまでの既存のツールでは何が不足しているのでしょうか。
先に示した質問をまとめると、その答えになります。
「すべての作業項目が、一人一人の具体的な作業内容に紐づけられ、納品物の状態や作業の完了基準が明確となった上で、いつ・誰が実施すべきかが明確となっているもの」
です。
WBSを例に、どのようになっているべきかをお話ししましょう。
WBSは、「大項目」「中項目」「小項目」などの階層構造によって、作業項目を分類しています。最も詳細な項目となる作業項目は、最小の作業単位として定義されるべきです。最小の作業単位であれば、その作業項目は唯一の「誰か」に紐づけされますし、この作業項目はなにをしなければならないのか、と考え込む必要がなくなります。作業者は、今日、実施する予定の作業項目を眺めて、まちがいなく作業を進められるようになることが理想です。
例えば、「Webサーバーの設定」という作業項目ではなく、「/etc/apache/httpd.conf ファイルの修正」と示し、参照元として「Webサーバー詳細設計書」、納品物として「Webサーバー構成パラメートシート」など、インプットとアウトプットまで明確にできれば、まちがいが無いでしょう。
そして、このWBSは全てのメンバーが全体も詳細も一任できるようにしていれば、各々のメンバーがプロジェクトの進捗状況を理解することが可能です。
このように、進捗管理のためのツールを正しく準備することで、プロジェクトを可視化することができます。
「そんな理想なんて分かっているけど、できるわけないじゃないか」
とおっしゃるかもしれません。では、その話は 4章で示すものとして、ここでは、もう一つの「2. メンバー間で情報を正しく連携する」について、先にお話ししましょう。
3-2. メンバー間で情報を正しく連携する
ここまでの話を見てきたあなたなら、このような気づきがあるかも知れません。
「理想のWBSを作成することで、情報を正しく連携できるようになるのではないか」
はい、それだけでうまく行くことが理想でしょう。
しかし、情報といってもプロジェクトの進捗状況を示すものだけではありません。今、私が思いつくだけでも、お客様から伺った要件、制約、プロジェクト運営で発生した課題、リスク、アーキテクトが設計したアーキテクチャと、その設計内容、などなど多岐に渡ります。これらは、WBS上の作業項目の内容へと影響を受けますが、WBS上に記述すべきものとは考えられていません。
では、WBSと同じように、受領した資料や作成資料、課題管理表も正しく理想どおり管理できれば良いのではないでしょうか。
しかし、これまででご理解いただけるように、残念ながら我々人間は、理想どおりに活動することができません。
プロジェクトに参加するメンバーは、性格・環境・知識など異なる感情を持った人間です。その日の気分や気持ちで、常に理想どおり行動することはできません。むしろ、その理想に反発して、一切、理想どおりに行動してくれないメンバーもいることでしょう。
「仕事だから」と命令したところで、そのメンバーが気持ちよく作業と活動をできるわけではありません。むしろ、各メンバーが、円滑に、楽しく、気持ちよく作業でき、メンバー間のコミュニケーションがうまく進められるような環境を準備することが大事なのです。
「そうは言っても、基盤の作業者はデータセンターに引きこもってるし、プログラマは頭を抱えながら、朝から晩までプロジェクトルームのPCを叩いているし、プロジェクトマネージャもアーキテクトもお客様の情シスに入り浸っているような状況じゃないか。どうやって、各メンバーが交わってコミュニケーションすることができるの?」
私もそう、ずっと考えていました。
場所も時間も活動内容も異なる、各々のメンバーが交流できる方法はないだろうか。みなさんも、考えたことはあるでしょう。
その解決策の一つに、SNS (Social Networking Service) があります。
あなたもTwitterやfacebookという名前を聞いたことはありませんか、そして、実際に使ったことはないでしょうか。mixiなどもそうです。少し毛色が異なりますが、GREE や mobage などの携帯ゲームも SNS を主体にしています。この SNS を利用すると、情報の連携、メンバー間の交流など、コミュニケーションを促進し、支援するはたらきがあることが分かってきています。
「なるほど、コミュニケーションの支援に SNS も利用することは分かるけれども、それだけで解決するようなものなの?」
お気持ちはよく分かります。私もここまでの内容だけでは半信半疑です。しかし、先の課題対策と含めて、ゲーミフィケーションを活用すれば、光明が見えてくると言うわけです。
では、具体的にどのような方法を使えば良いか、次の章で説明します。
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